日本舞踊の東西の違い
- F towako
- 2024年10月13日
- 読了時間: 3分
10月12日「東西名流舞踊鑑賞会」を観てきました。
初回の開催が1984年、国立文楽劇場 開場記念の年、
そして今回は、開場40周年記念。
お笑いなどでも東京と大阪に違いがあるようですが、
舞踊でも東西に違いがあります。
普段の生活では自覚していない、呼吸・間といったわずかな東西の違いを、こうした機会に認識できるのは興味深いことです。
私が観たのは第2部でしたので、上方舞の流派は吉村流と山村流でした。
●地歌「珠取海士」
吉村流の珠取海士を初めて観ました。プログラムに「女舞なので艶物の要素や色気もないといけない、と教わりました」とある通りの上方舞でした。
一方、YouTubeで見ることができる四代目 井上八千代の「珠取海士」の映像では、能「海士」の玉之段をそのまま日本舞踊にした感じを受けます。
昭和32年当時52歳の舞、こちら↓必見です!
井上流は直線的で、同じ上方舞でもかなり印象が違います。
一方で、座り方にはどこか共通点があります。座敷で発展してきたからでしょうか。
●義太夫・長唄「五斗三番叟」
山村流の五斗三番叟は、歌舞伎の作品の一場面を舞踊にしたもの。
曲も義太夫と長唄ですが、上方歌舞伎の和事ような柔らかさがありました。
あの上方独特の柔らかさは、和歌を詠みあっているような感覚なのでしょうか。
●清元「文売り」
さて、東からは藤間恵都子先生の「文売り」
曲は江戸っ子好みの清元。役は廓での様子を話しながら恋文を売る女性。
廓で起きた三角関係の喧嘩に、様々な人たちが首を突っ込み、ドタバタの展開になっていく様子を踊り分けて魅せる作品。
さらに、この作品は日本舞踊には珍しく、セリフが多い。
人形浄瑠璃の劇作家、近松門左衛門作「嫗山姥」の二段目「八重桐廓噺」に出てくる八重桐のしゃべりの形を借りている「しゃべり」芸が楽しめます。
文楽劇場でやる日本舞踊としてふさわしいですね。
「しゃべり」については歌舞伎役者 中村萬壽(当時 時蔵)のこちら↓の記事が役立ちます。
文売りは、藤間恵都子先生が、お稽古場で何人かの弟子にお稽古をしているところを何度か見学していますが、
今回の藤間恵都子先生は、お稽古をつけている時とは違う感じがしました。
やはり、国立文楽劇場で、近松門左衛門にゆかりのある芸をやるので、一段と工夫を凝らしたのでしょうか。
花道から登場した時の見た目の印象は、昔、傾城だったプライドの高いキツイ印象の女性でしたが、しゃべりが始まると、ちょっともっさり感もあって、つい話を聞きたくなるような親しみが出てきました。
歌舞伎や日本舞踊のキャラクターは、このように、一辺倒で説明することができない、決め付けられない複雑な人物像が浮かび上がると、観ている方は面白さが倍増しますよね。

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