能も日本舞踊もどちらも素晴らしい:巴御前
- F towako

- 8月10日
- 読了時間: 2分
更新日:8月14日
2025年7月6日、観世能楽堂にて、坂口貴信師の「巴」を観た。
この人の舞姿はいつみても美しい。
「かくて御前を立ち上がり。見れば敵の大勢。あれは巴か女武者〜」からの舞姿は期待通りの勇壮な美しさが際立つ舞姿だった。
しかし、それ以上に良かったのは、その後の、義仲を置いていく時の思い入れに、胸を打たれた。この場面のために、この能が作られているように思えるほどだった。終わってからしばらく余韻が残りすぐに立ち上がれなかった。
一般的に知られている物語では、巴は義仲から東国に落ち延びるよう命ぜられて立ち去り、義仲の最期を見届けたのは兼平のはず。
なぜ能「巴」ではここで義仲を死なせる物語にしたのだろうかと、疑問だったが、この舞台を観て腑に落ちた。
さて、日本舞踊の方はというと、2023年7月22日に国立劇場で開催された二人会で観た巴御前が印象的でした。
「二人会」というのは藤間恵都子先生と、花柳基師による踊りの会。お二方とも国の重要無形文化財として指定された、総合認定の保持者ですから、見応え十分。
この時、披露されたのが新作、義太夫「鳰の湖(におのうみ) 義仲巴別れの段」
花柳基師から作者の円美恵子先生に「女武者として有名な巴ですが、女として義仲への思いを描きたい」と希望されたとプログラムに記載がありました。
あからさまに義仲と巴の男女の思いが出ていて、舞踊劇らしい面白さがありました。
最後は、義仲が巴に落ち延びるよう説き伏せ、巴が花道を引っ込んだ後に、朝日将軍と呼ばれた義仲が、朝日が描かれた大道具に向かって馬を走らせる場面で終わるのですが、男女の仲を描いていただけあって、義仲の非業な運命よりも、巴が乙女のごとく義仲との別れを胸に秘めて涙をこらえて走り去っていく女の姿が印象的でした。
次回の「二人会」は2025年9月13日(土)観世能楽堂で開催されます。
日本舞踊は、開催される会場によって、とても雰囲気が変わるものです。今回は観世能楽堂での開催、どのような舞台になるのか楽しみです。


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